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冒頭文
深夜の宴 一 「ア。記代子さん」 熱海駅の改札口をでようとする人波にもまれながら、放二はすれちがう人々の中に記代子の姿をみとめて、小さな叫び声をのんだ。 記代子は、彼がみとめる先に、彼に気付いていたようだ。 けれども、視線がふれると、記代子は目を白くして、ふりむいた。そして人ごみの流れに没してしまった。 放二は深くこだわらなかった。記代子が熱海に
文字遣い
新字新仮名
初出
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
底本
- 坂口安吾全集 09
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年10月20日