あんごこうだん 11 きょうそてんらんかい
安吾巷談 11 教祖展覧会

冒頭文

私は先般イサム・ノグチ展というものに誘われたが、熱心に辞退して、難をのがれた。展覧会の写真を拝見して、とうてい私のような凡骨の見るべきものではないと切に自戒していたからである。 「無」というのが、ありましたネ。私は写真で見たのだが、人間の十人前もあるように大きい。手の指が二本で輪をつくッているように見える。 無門関か碧巌録(へきがんろく)の公案からでも取材したのかナ。なんしろ「無」とあ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二八巻第一五号」1950(昭和25)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日