あんごこうだん 07 あたみふっこう
安吾巷談 07 熱海復興

冒頭文

私が熱海の火事を知ったのが、午後六時。サイレンがなり、伊東のポンプが出動したからである。出火はちょうど五時ごろだったそうである。 その十日前、四月三日にも熱海駅前に火事があり、仲見世が全焼した。その夜は無風で、火炎がまッすぐ上へあがったから、たった八十戸焼失の火事であったが、山を越えて、伊東からも火の手が見えた。もっともヨカンボーというような大きな建物がもえ、焼失地域が山手であったせいで

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二八巻第八号」1950(昭和25)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日