あんごこうだん 04 きょうわれけいりんす
安吾巷談 04 今日われ競輪す

冒頭文

先月某新聞に競輪のことを書いたが、そのときはまだ競輪を見たことがなかった。二十万円ちかい大穴だの、八百長紛擾(ふんじょう)、焼打、そうかと思うと女子競輪などゝ殺気の中に色気まであり、百聞は一見に如(し)かずと食指をうごかしていたが、伊豆の辺地に住んで汽車旅行がキライときているから、生来の弥次馬根性にもかかわらず、出足がおくれたのである。 二十日あまり坐りつゞけて、予定の仕事が全部かたづい

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二八巻第四号」1950(昭和25)年4月1日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日