あんごこうだん 02 てんこうこうじょしのばあい
安吾巷談 02 天光光女史の場合

冒頭文

松谷事件は道具立が因果モノめいていて、世相のいかなるものよりも、暗く、陰惨、蒙昧、まことに救われないニュースであったが、骨子だけを考えれば、昔からありきたりの恋の苦しみの一つで、当事者の苦しみも察せられるのである。 骨子は何かと云えば、 一、政治意見の対立する男女が円満に結婚生活と政治生活を両立せしめうるか。 二、男には妻子がある。 悲しい恋の骨子というものは、

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二八巻第二号」1950(昭和25)年2月1日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日