しょうぶし
勝負師

冒頭文

五月九日のことだ。この日林町のモミヂといふ旅館で、呉清源(ごせいげん)八段をかこんで、文人碁客の座談会があつた。豊島与志雄、川端康成、火野葦平に私といふヘボ碁打である。呉八段も今度例の神様からはなれたので、この座談会では気軽に神様の話もできるだらうと、私はそれをタノシミにしてゐたのである。 去年、本因坊薫和(くんわ)・呉清源の十番碁の第一局目が火蓋をきつたのがこの旅館で、私はそのとき観戦

文字遣い

新字旧仮名

初出

「別冊文藝春秋 第一二号」1949(昭和24)年8月20日

底本

  • 坂口安吾全集 08
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年9月20日