しんやはねむるにかぎること
深夜は睡るに限ること

冒頭文

私は皆さんに精神病院へ入院されんことをおすゝめしたい。精神病院には深夜のメイ想などゝいう古典的なるものは存在しないのである。深夜はみんな睡っています。睡らせてくださるのです。こういうのを神の力というのかも知れない。 精神病院には、持続睡眠療法という浦島太郎の弟分に当る古典的近代が実存致しているのです。この浦島次郎療法は鬱病とか麻薬中毒などに用いて卓効がある。さる強力な催眠薬を用いて人工的

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第一巻第五号」1949(昭和24)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日