にちげつさま
日月様

冒頭文

私が精神病院へ入院しているとき、妙な噂が立った。私が麻薬中毒だというのである。警視庁から麻薬係というのが三人きて、私の担当の千谷先生や、係の看護婦がひどい目にあったらしい。二時間にわたってチンプンカンプンの応接に苦しんだということをきいた。さすがに東大病院は、患者に会わせるようなことはしない。会えば誤解は一度に氷解するが、麻薬中毒とは別の意味で患者が怒りだし、それによって、せっかくの治療がオジャン

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物 第四巻第七号」1949(昭和24)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日