しんけいすいじゃくてきやきゅうびがくろん
神経衰弱的野球美学論

冒頭文

このほど東大の神経科へ入院したおかげでいくらか病気がよくなってからの二週間ほどたいがい後楽園へ通った。 科長の内村裕之先生は往年の大投手であり今日でも野球ジャーナリズムの第一人者であるから、廻診の折、もう君、そろそろ、後楽園へ野球でも見物に行きたまえ、その方が気晴らしになる、とアッサリ先方から意外の外出を許された時は、僕も嬉しかったが、実は内々不安でもあった。実を申すと、まだ歩行がさのみ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第一巻第四号」1949(昭和24)年6月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日