さくしゃのことば〔『ひ だいいちぶ』〕 |
作者の言葉〔『火 第一部』〕 |
冒頭文
日本に戦争があってくれれば——私は二十年前から、そう考えていた。小説家としての私は、私の存命中に戦争に遭遇したいということを、半ば漠然と、しかし、半ば明確に、希望していたことは否定できない。 スタンダールなどを読むたびに、私だったら、戦争をこんな風に書きはしないだろうと考え、なんとかして存命中に戦争にお目にかかりたいと思ったのだ。 人間は平和を愛す動物でもあるが、葛藤のさけがた
文字遣い
新字新仮名
初出
「火 第一部」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年5月30日
底本
- 坂口安吾全集 07
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年8月20日