にしおぎずいひつ
西荻随筆

冒頭文

丹羽文雄の向うをはるワケではないが、僕も西荻随筆を書かなければならない。どうしても、西荻随筆でなければならないようである。 西荻窪のTという未知の人から手紙がきた。ひらいてみると、約束の日にいらっしゃいませんでしたが、至急都合をつけて来て下さい、という意味の文面で、日蝕パレス(仮名)女給一同より、となっている。 私は、西荻窪という停車場へ下車したことは生れて以来一度もないのであ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第一巻第一号」1949(昭和24)年3月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日