「しせいさつじんじけん」をひょうす |
「刺青殺人事件」を評す |
冒頭文
刺青殺人事件は、すぐ犯人が分ってしまう。それを、いかにも難解な事件らしく、こねまわしているから、後半が読みづらい。三分の二が解決篇みたいなもので、その冗漫が、つらい。将棋をやって、犯人をテストするなど、バカバカしくて、堪えがたいものがある。解決篇の長さは、十分の一、或いは、それ以下の短かさで、まに合い、そして、短くすることによって、より良くなるのである。 いったいに、小説というものは、短
文字遣い
新字新仮名
初出
「宝石 第四巻第一号」1949(昭和24)年1月1日
底本
- 坂口安吾全集 07
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年8月20日