わたしのご |
私の碁 |
冒頭文
塩入三段と岩谷社長とフラリときて挑戦するのを迎えうって、僕が塩入三段に勝った。これを雑誌にのせるという、まことに醜態で、恥を天下にさらす、あさましい話である。 私があんまり布石にヘタクソで、二十目ちかいダンゴ石が出来上った始末だから、塩入三段も驚いた様子で、あんまり勝っちゃ気の毒だと気を許したところをツケこんで向う脛を払ったような碁だから、私はもとより勝った気はしていないのである。
文字遣い
新字新仮名
初出
「囲碁春秋 第二巻第一二号」1948(昭和23)年12月1日
底本
- 坂口安吾全集 07
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年8月20日