せんそうろん
戦争論

冒頭文

戦争は人類に多くの利益をもたらしてくれた。それによって、民族や文化の交流も行われ、インドの因明(いんみょう)がアリストテレスの論理学となり、スピロヘーテンパリーダと共にタバコが大西洋を渡って、やがて全世界を侵略し、兵器の考案にうながされて、科学と文明の進歩はすゝみ、ついに今日、人間は原子エネルギーを支配するに至ったのである。 多くの流血と一家離散と流民窮乏の犠牲を賭けて、然し、今日に至る

文字遣い

新字新仮名

初出

「人間喜劇 第一一号」イヴニングスター社、1948(昭和23)年10月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日