きりすてごめん ――せっそうなきジャーナリズム――
切捨御免 ――貞操なきジャーナリズム――

冒頭文

帝銀容疑者、北海道のH画伯のタイホ、上京、二十三日上野駅到着は犯人見物の人出で賑ったそうだが、首実検で、犯人らしくないときまると、たった一日でガラリと人気が変って、今日(八月二十五日)の新聞は、人権侵害、にわかにH画伯に同情あつまり、警視庁は総攻撃をくらっている。 警視庁にも手落ちはあった。タイホに向った警部補が真犯人と断言したこと、特にタイホを発表したことが、いけない。これを発表したこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール読物 第三巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日