しがなおやにぶんがくのもんだいはない
志賀直哉に文学の問題はない

冒頭文

太宰、織田が志賀直哉に憤死した、という俗説の一つ二つが現われたところで、異とするに足らない。一国一城のアルジがタムロする文壇の論説が一二の定型に統制されたら、その方が珍であろう。奇説怪説、雲の如くまき起り、夜鴉(よがらす)文士や蝮(まむし)論客のたぐいを毒殺憤死せしめる怪力がこもれば結構である。 人間にたいがいの事が可能でありうるように、人間についての批評も、たいがいの事に根がありうるも

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞 第二五七七二号」1948(昭和23)年9月27日

底本

  • 坂口安吾全集 07
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年8月20日