おさかなじょし |
お魚女史 |
冒頭文
その朝は玄関脇の応接間に×社の津田弁吉という頭の調子の一風変った青年記者が泊りこんでいた。私は徹夜で×社の原稿を書きあげたところで、これから酒をのんで一眠りと、食事の用意ができたら弁吉を起そうと考えていた。その弁吉がキチンと身仕度をとゝのえて、ノッソリとあがってきた。 「ねえ、先生、妙な女が現れたよ。キチガイかも知れないねえ」 文士の生活になじんでいる雑誌記者というものは、若年で、頭の
文字遣い
新字新仮名
初出
「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日
底本
- 坂口安吾全集 07
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年8月20日