こうしゅうちんぶたい
甲州鎮撫隊

冒頭文

滝と池 「綺麗(きれい)な水ですねえ」 と、つい数日前に、この植甚(うえじん)の家へ住込みになった、わたりの留吉(とめきち)は、池の水を見ながら、親方の植甚へ云った。 「これが俺(おれ)んとこの金箱さ」 と、石に腰をかけ、煙管(きせる)をくわえながら、矢張り池の水を見ていた植甚は、会心の笑いという、あの笑いかたをしたが、 「この水のために、俺んとこの植木は精がよくなるのさ

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月

底本

  • 新選組興亡録
  • 角川文庫、角川書店
  • 2003(平成15)年10月25日