たんていのまき
探偵の巻

冒頭文

(一) 去年、京都の伏見稲荷前の安食堂の二階に陣どつて「吹雪物語」を書いてゐたころ、十二月のことだつた。食堂の娘が行方不明になつた。 娘は女学校の四年生だつたが、専ら定評ある不良少女で、尤も僕はその心根却々(なかなか)見どころのある娘だと思つてゐたから、娘の方も信用してゐた。 そのころ京都には二人の友人があつた。一人は某大学の先生山本君。一人はその春学校を卒業して京宝撮影

文字遣い

新字新仮名

初出

「都新聞 第一八三四二~一八三四四」1938(昭和13)年11月24~26日

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日