ほんごうのなみきみち |
本郷の並木道 |
冒頭文
一年半京都に住んで、本郷へ戻つてみると、街路樹の美しさが、まつさきに分つた。京都は三方緑の山にかこまれてゐるが、市街の樹木を殆ど思ひ出すことができないのである。多分、街路樹も、なかつたのだらう。 本郷へ戻つてきて、まづ友達とUSで昼食をとつた。戸口を通して、街路樹が見えるのである。それだけのことが、すでに甚だ新鮮だつた。キャフェのテラスが家庭の延長のやうなパリジャンにとつて、常にマロニエ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「帝国大学新聞 第七二五号」1938(昭和13)年6月20日
底本
- 坂口安吾全集 02
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年4月20日