きこうときょうしゆう |
気候と郷愁 |
冒頭文
私は越後の新潟市に生れたが、新潟市に限らず、雪国の町は非常に暗い、秋がきて時雨が落葉を叩きはじめる頃から長い冬が漸く終つて春が訪れるまで、太陽を見ることが殆んど稀にしかない。冬の暗澹たる気候には発狂しさうな焦燥を感じて私は弱つたものである。直接の気候以上にやりきれないのは、人間が気候の影響を受け易く、自分の性格や物の見方感じ方に間接の気候の顔を見出すときには非常に惨めな自分を感じる。晴雨相半して特
文字遣い
新字旧仮名
初出
「女性の光 第一三巻第二号」1937(昭和12)年2月1日
底本
- 坂口安吾全集 02
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年4月20日