おしゃべりきょうそう
お喋り競争

冒頭文

一 この九月末宇野浩二氏から電話がきた。私は生憎不在だつたが、至急の話があるから今夜か明朝会ひたい、訪れてほしいといふのであつた。なんの話か見当がつかなかつたが、私はその月の文芸通信に、牧野信一の自殺にやゝあてはまることを題材にした小説を書いた。見やうによつては確にさしさはりのある題材だから、その話かも知れないと思つた。尤も其小説は急所のところがひどい伏字で、私の方では伏字の部分を書くために

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1936(昭和11)年12月16日~18日

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日