にいがたのさけ
新潟の酒

冒頭文

新潟へ帰ることはめつたにないが、先年村山政司氏等の個人展を新潟新聞楼上にひらいたとき、私も三週間ほど新潟に泊つた。展覧会より呑みまはるのが忙しくて商売のやうな有様だつたが、驚いたのは新潟の酒が安くてうまいことだつた。屋台店の酒すら充分のめるのである。和田成章氏の案内で「おきな」といふ待合で鯨飲した時は待合酒の素晴らしさに一驚した。我々の考へでは菊か桜か白鷹(はくたか)のそれも純粋な生一本だらうとい

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潟新聞 第一九九八二号〈夕刊〉」1936(昭和11)年12月11日付(10日発行)

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日