すたんだあるのぶんたい
スタンダアルの文体

冒頭文

私はスタンダアルが好きであるが、特に私に興味のあるのは、彼の文体の方である。 凡そ人間の性格を眼中に入れなかつた作家といへば、スタンダアルほどその甚しいものはない。人間を性格的に把握しやうとすることが彼の作品に皆無である。 然し彼には人を性格的に把握する能力が欠けてゐたわけではない。欠けてゐるどころか人並以上に眼光が鋭く性格把握の能力が勝れてゐるのは「バイロン論」を読めば分る。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸汎論 第六巻第一一号」1936(昭和11)年11月1日

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日