げんじつしゅぎしゃ
現実主義者

冒頭文

輓近(ばんきん)日本帝国に於きましては実子殺しとか若妻殺しとかその他色々賑やかな文化的事件があります。私自身はそれによつて毎日の新聞が退屈なしに読める以外に重大な意味を感じたことはありませんが、ある一日の新聞に当今有名な一批評家が実子殺しを云々して、かかる事件は実際あつてみなければ想像もつかない事件であつて、わが帝国の尊敬すべき写実主義者は(彼の言葉によれば小説家は、といふことになるのですが)この

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸通信 第四巻第五号」1936(昭和11)年5月1日

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日