ふかかいなしつれんについて
不可解な失恋に就て

冒頭文

人あるところに恋あり、各人各様千差万別の恋愛が地上に営まれてゐることはいふまでもないことであらうが、見方によればどの恋も似寄つたものだといへないことはない。文学や映画の恋の筋書が似寄つたものであるやうに、人生の恋の筋書も似寄つてゐる。あまつさへ人生の恋はむしろ概して先人の型を摸することが甚だ多く、いつぱし自らの情意のままに思ふところを行つた筈が知識高き人にあつても、或ひは若きエルテルの恋を、或ひは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「若草 第一二巻第三号」1936(昭和11)年3月1日

底本

  • 坂口安吾全集 02
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年4月20日