さこんのいかり
左近の怒り

冒頭文

左近の上京 夏川左近(さこん)は久方ぶりで上京のついで古本あさりに神田へでた。そのときふと思いだしたのは大竜(だいりゅう)出版社のことだ。終戦後の数年間、左近は密輸船に乗りこんでいた。荒天(しけ)つづきのつれづれに、そのころの記録をつづり「密輸船」という題をつけて大竜出版社へ送ったままになっている。かれこれ一年ぐらい前のことである。むろん原稿を送りこんでいきなり本にしてもらえると思ってもいないが

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日