そがのあばれんぼう
曽我の暴れん坊

冒頭文

出家の代り元服して勘当のこと ある朝、曾我の太郎が庭へでてみると、大切にしている桜の若木がスッポリ切られている。 「何者のイタズラかな」 しかし切口を見ると、おどろいた。直径二寸五分ほどもある幹を一刀両断にしたもの、実に見事な切口。凡手の業ではない。しかし、かほど腕のたつ大人(おとな)がこんなイタズラはしそうもない。イタズラしそうな奴といえば女房の連れ子箱王(はこおう)ぐらいのも

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 第三〇巻第六号」1954(昭和29)年5月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日