ヒノエウマのはなし
ヒノエウマの話

冒頭文

私の本名は炳五(ヘイゴ)という。男兄弟の五人目だから五の字がついてるが、炳はアキラカというような意味のほかにこれ一字でヒノエウマを表している字でもある。また、ヘイゴという音はヒノエウマの丙午に通じてもおって、ヒノエウマづくしのような名前だ。戸籍の半分を名前が表してるから便利でもあるが、齢がごまかせないような不便もある。甚だしく手のこんだ名前だから、親父にとっては苦心の作で、あるいは名作と自負してい

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潟日報 第四〇六〇号」1954(昭和29)年1月3日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日