もちのタタリ
餅のタタリ

冒頭文

餅を落した泥棒 土地によって一風変った奇習や奇祭があるものだが、日本中おしなべて変りのないのは新年にお餅を食べ門松をたてて祝う。お雑煮の作り方は土地ごとに大そうな違いはあるが、お餅を食べ門松をたてて新春を祝うことだけは日本中変りがなかろうと誰しも思いがちである。 意外にも、新年にお餅も食べず門松もたてない村や部落は日本の諸地にかなり散在しているのだが、上州には特に多い。その上州でも

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日