はっくつしたびじょ
発掘した美女

冒頭文

恋わずらい 梅玉(ばいぎょく)堂は東京で古くから名のある菓子店である。その当主はよくふとっていたが、神経衰弱気味であった。見合をしたのが発病の元であった。 むろん初婚ではない。梅玉堂は五十三だ。死んだ先妻には大学生の倅(せがれ)をはじめ三人の子供が残されていた。 見合をした女の人も初婚ではなかった。初音(はつね)サンという人だ。先夫が病死して、子がなかったから、生家に戻っ

文字遣い

新字新仮名

初出

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日