けっせんかわなかじま うえすぎけんしんのまき ――えちごのかみあんごしょうぐんのふんせんき――
決戦川中島 上杉謙信の巻 ――越後守安吾将軍の奮戦記――

冒頭文

馬力にうたる 永禄四年七月三十日。余(上杉謙信)はひそかに春日山城を降り五智の海へ散歩にでた。従う者は池田放善坊という新発意(しんぼち)ただ一人。余は時々サムライがイヤになる。自分がサムライであることも、サムライの顔を見るのもイヤになることがあるのだ。この日は特にそうだった。 余はこの年の三月小田原を攻め、古河に公方を置きなどして、自らも病に倒れ、六月に至ってようよう帰国したばかり

文字遣い

新字新仮名

初出

「別冊文藝春秋 第三五号」1953(昭和28)年8月28日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日