せんきょさつじんじけん
選挙殺人事件

冒頭文

三高木工所の戸口には、 「選挙中休業」のハリガミがでている。候補者の主人はそれですむであろうが、従業員は困るだろう。近所の噂をきいてみると、 「従業員たって、小僧のようなのも合わせて七八人の事ですよ。みんな選挙運動に掛りきりですから、商売は休業でも多忙をきわめているのですよ」という話であった。三高吉太郎という人物は、終戦後この土地へ現れて冷蔵庫を造って当てた。今では職人も使って木製の家具類

文字遣い

新字新仮名

初出

「小説新潮 第七巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

底本

  • 坂口安吾全集 14
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年6月20日