にちえいのおもいで
日映の思い出

冒頭文

私は戦争中、日本映画社の嘱託をしていた。一週間に一度出掛けて、試写室でその週のニュース映画と文化映画と外に面白そうなのを見せて貰って、専務と十五分ぐらい話をしてくればよろしいので、だから専務とは十五分ずつ何十回か話を交したわけで、この人は後日映画界の戦犯などゝ云われているが、経営上のことに就ては私は知らないが、映画芸術に対する認識、識見は、先ず日本映画界では他に比肩する社長とか重役はなかったと思う

文字遣い

新字新仮名

初出

「キネマ旬報 再建第一〇号」1947(昭和22)年2月10日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日