はんスタイルのき |
反スタイルの記 |
冒頭文
(上) 私がヒロポンという薬の名をきいたのは六七年前で、東京新聞のY君がきかせてくれたのである。そのときは二日酔いの薬というY君式の伝授で、社の猛者(もさ)連中が宿酔(ふつかよい)に用いて霊顕あらたか、という効能がついていた。けれども、当時はそろ〳〵酒も姿をひそめて、めったに宿酔もできない世の中になりかけていたから、ヒロポンのお世話になる必要もなかった。 それから一二年して、仕事に
文字遣い
新字新仮名
初出
「東京新聞 第一五八二、一五八三号」1947(昭和22)年2月6日、2月7日
底本
- 坂口安吾全集 04
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年5月22日