もはんしょうねんにぎぎあり
模範少年に疑義あり

冒頭文

戦争中、私の家の両隣はそれ〴〵軍需会社の寄宿舎となり、一方は田舎の十八九歳の連中五十名ぐらゐ、一方は普通のしもた家を軍需会社が買つて七八名の少年工を合宿させておく。五十名の方は青年学校の生徒でよく訓練されてをり、軍隊式の規則で朝起きてから寝るまで号令をかけてやつてゐる。警報がなると必ず全員起床して戸外で待機するといふぐあひだ。ところが七八名の方は時々酒など持ち帰つて酔つ払つて唄つたり、警報が鳴つて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「青年文化 第二巻第一号」創生社、1947(昭和22)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日