どうきょう
道鏡

冒頭文

日本史に女性時代ともいふべき一時期があつた。この物語は、その特別な時代の性格から説きだすことが必要である。 女性時代といへば読者は主に平安朝を想像されるに相違ない。紫式部、清少納言、和泉式部などがその絢爛たる才気によつて一世を風靡したあの時期だ。 けれども、これは特に女性時代といふものではない。なぜなら、彼女等の叡智や才気も、要するに男に愛せられるためのものであり、男に対して女

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第二八巻第一号」1947(昭和22)年1月1日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日