てんのうしょうろん |
天皇小論 |
冒頭文
日本は天皇によつて終戦の混乱から救はれたといふが常識であるが、之(これ)は嘘だ。日本人は内心厭なことでも大義名分らしきものがないと厭だと言へないところがあり、いはゞ大義名分といふものはさういふ意味で利用せられてきたのであるが、今度の戦争でも天皇の名によつて矛をすてたといふのは狡猾な表面にすぎず、なんとかうまく戦争をやめたいと内々誰しも考へてをり、政治家がそれを利用し、人民が又さらにそれを利用したゞ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文学時標 第九号」文学時標社、1946(昭和21)年6月1日
底本
- 坂口安吾全集 04
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年5月22日