ちほうぶんかのかくりつについて
地方文化の確立について

冒頭文

農村は淳朴であるといふことが過去の常識であつたけれども、近頃では農民ぐらゐ我利々々なものはないと云つて都会の連中は恨んでゐる。どちらが果して真実であるかといへば、之(これ)は大きな問題で、然し、先づ我々が第一に反省しなければならないことは、農村は淳朴だときめてかゝつて一向に深い考察を加へなかつた思考の不足に禍根があつたといふことである。常識とはかういふものだ。我々は常識を思考の根底とし、その上に生

文字遣い

新字旧仮名

初出

「月刊にひがた 第一巻第三号」新潟日報社、1946(昭和21)年2月25日

底本

  • 坂口安吾全集 04
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日