こうき(『どうきょう』)
後記〔『道鏡』〕

冒頭文

道鏡といふ題名はよくなかつた。この小説の主人公はむしろ孝謙天皇だ。三人の女主人に維持された天皇家といふ家族政府の独自な性格、家をまもるに鬼の如くに執念の深い女主人の意志によつて育てられ、その意志の精霊の如くに結実した聖武天皇とその皇后と、そして更にそこから生れた孝謙天皇。私にとつてこの小説を書かしめる魅力となつた最大なものは、この女帝だ。 それを私が「道鏡」と題したのは、ジャーナリズムに

文字遣い

新字旧仮名

初出

「道鏡」八雲書店、1947(昭和22)年10月25日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日