しそうなきめ ――「きけんなかんけい」によせて――
思想なき眼 ――「危険な関係」に寄せて――

冒頭文

この著作を刊行するに当つてラクロは神経を使つたらしい。それで序文に、悪人の手管(てくだ)を暴露することは良俗に貢献するであらうなどと効能を述べてゐるが、それでも尚、自信がなく、非難すべき根拠に就て自覚をいだいてゐたことは序文が語る通りである。 そしてラクロがどのやうにこの一書の効能をのべたて、ひけらかしてみたところで、事実に於て「良俗」に反することを御当人が自覚しない筈はない。そのことは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「世界文学 第一四号」1947(昭和22)年10月10日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日