ちるにほん
散る日本

冒頭文

一九四七年六月六日 私は遠足に行く子供のやうな感動をもつて病院をでた。私の身辺には病人があり、盲腸から腹膜となつて手術後一ヶ月、まだ歩行不自由のため私も病院生活一ヶ月、東京では六・一自粛などと称して飲食店が休業となり、裏口営業などといふ、この影響如何、悪政と思はざるか、新聞記者がそんなことを訊きにくる。つまり私が飲ン平で六・一自粛の被害者の代表選手に見立てられたわけだが、病院生活一ヶ月、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「群像 第二巻第八号」1947(昭和22)年8月1日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日