かんねんてきそのた
観念的その他

冒頭文

私の小説が観念的だといふのは批評家の極り文句だけれども、私の方から言ふと、日本の小説が観念的でなさすぎる。 小説が観念的でなければならぬといふ筈はないけれども、日本人の生活には観念の生活が不足だと思はれる。観念も亦(また)実際の生活で食慾色慾物慾、観念なしにそれらのものが野放しにされてゐるやうな生活は、その方が実在するものではない。 我々の思想生活といふものは観念によるもので、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学界 第一巻第二号」1947(昭和22)年7月25日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日