オモチャばこ
オモチャ箱

冒頭文

およそ芸ごとには、その芸に生きる以外に手のない人間といふものがあるものだ。碁将棋などは十四五で初段になる、特別天分を要するものだから、その道では天来の才能に恵まれてゐるが、外のことをやらせると国民学校の子供よりも役に立たない、まるで白痴のやうな人があつたりする。然しかういふ特殊な畸形児はせゐぜゐ四五段ぐらゐでとまるやうで、名人上手となるほどの人は他の道についても凡庸ならぬ一家の識見があるやうである

文字遣い

新字旧仮名

初出

「光 第三巻第七号」1947(昭和22)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日