ちかごろのさけのはなし
ちかごろの酒の話

冒頭文

メチルで死人がでるやうになつたとき大井広介から手紙で、新聞でメチル死といふ記事を見るたびに、私が死んだんぢやないかと思つて読んでゐる。気をつけてくれ、といふことを書いてよこした。そのとき、大丈夫、オレより先にタケリンがやられるだらう。そしたらオレも気をつける。と何気なく書き送つたところ本当に武田麟太郎が仆(たお)れてしまつた。こいつはいけないと、心細さが身にしみたものだ。 その時以来、私

文字遣い

新字新仮名

初出

「旅 第二一巻第六号」1947(昭和22)年6月1日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日