わたしのしょうせつ |
私の小説 |
冒頭文
近頃の編輯者は芸なしぞろひで、今年になつてから、私に、私の小説の弁明を書けと言つてきた新聞、雑誌が、合計二十ほどあるのである。新聞雑誌の数にくらべて二十は少い数なのか知らないが、たつた一ヶ月といふ短かい期間に、東西南北、別々の編輯室の窓の下で智恵をしぼつたあげくに、二十人の編輯者が同じ原稿をたのみにくるとは、無芸大食、大食は否応なしに封じられてゐるかも知れぬが、流線型といふ感じではない。
文字遣い
新字新仮名
初出
「夕刊新大阪 第四六九号~四七一号」1947(昭和22)年5月26日~28日
底本
- 坂口安吾全集 05
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年6月20日