はなび
花火

冒頭文

私はミン平が皮のジャムパーを着てやつてきた時には、をかしくて困つた。似合はなすぎるのだ。ミン平も、いかにも全身これ窮屈です、といふ様子で、てれきつてゐるから、尚へんだ。 「てれるから変なのだよ。気取つてごらん。ねえ、胸をそらして威張るのよ」 「やだなあ。小学校の時から胸をそらした覚えがないんだよ、オレは」 このジャムパーは私が昨日散歩の道でふと目にとめると、むらむらその気になつてしま

文字遣い

新字旧仮名

初出

「サンデー毎日 臨時増刊号」1947(昭和22)年5月1日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日