わがせんそうにたいしょせるくふうのかずかず
わが戦争に対処せる工夫の数々

冒頭文

私はこれより一人の男がこの戦争に対処した数々の秘策と工夫の人生に就てお話したい。戦争を見物したいといふ人間なら星の数ほどあるであらうが、兵隊になつて自分自身が戦争するといふことになると、これは誰でも尻ごみする。ところが日本には「兵隊になる」といふ言葉は常識上は存在せず「兵隊にとられる」と称する通り、こつちが厭だと云つても兵隊にさせられるから仕方がない。こればかりは秘策の施し様もないのである。三月十

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学季刊 第三輯」1947(昭和22)年4月20日

底本

  • 坂口安吾全集 05
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年6月20日