さけのあとさき |
酒のあとさき |
冒頭文
私は日本酒の味はきらひで、ビールの味もきらひだ。けれども飲むのは酔ひたいからで、酔つ払つて不味が無感覚になるまでは、息を殺して、薬のやうに飲み下してゐるのである。私は身体は大きいけれども胃が弱いので、不味を抑へて飲む日本酒や、ビールは必ず吐いて苦しむが、苦しみながら尚のむ。気持よく飲めるのは高級のコニャックとウヰスキーだけだが、今はもう手にはいらず、飲むよしもない。ジンやウォトカやアブサンでも日本
文字遣い
新字旧仮名
初出
「光 第三巻第四号」1947(昭和22)年4月1日
底本
- 坂口安吾全集 05
- 筑摩書房
- 1998(平成10)年6月20日