ふりょうしょうねんとキリスト
不良少年とキリスト

冒頭文

もう十日、歯がいたい。右頬に氷をのせ、ズルフォン剤をのんで、ねている。ねていたくないのだが、氷をのせると、ねる以外に仕方がない。ねて本を読む。太宰の本をあらかた読みかえした。 ズルフォン剤を三箱カラにしたが、痛みがとまらない。是非なく、医者へ行った。一向にハカバカしく行かない。 「ハア、たいへん、よろしい。私の申上げることも、ズルフォン剤をのんで、氷嚢をあてる、それだけです。それが

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第四五巻第七号」1948(昭和23)年7月1日

底本

  • 坂口安吾全集 06
  • 筑摩書房
  • 1998(平成10)年5月22日